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編集後記vol.47

 勉強をみている近所の子とのやり取りから、ふと思い出した昔話。中学生の彼女は、学校の課題として「人権について考える」作文を出さなければならないとのこと。いじめや差別、障害にまつわることなど、題材は何でもいいようです。私は、まずは自分の心に問いかけて、小さな感情にも向き合うよう促します。やがて思い立ったように書き始めた様子に安心し、その姿を見守るうちに私の心の中にもズキリと痛む思い出を見つけました。

大学時代、ちょうど彼女と同じ学年の中学クラスに教育実習に行った時のこと。慣れない先生生活は過酷ではありましたが、皆優しい生徒たちで、最後は涙の別れとなったことを思い出します。そして「手紙でまたね」と言い残し東京に戻った私。その後生徒や担任の先生から何度か手紙をいただいたものの、私は一度も返すことが出来ませんでした。なぜ返さなかったのか。今考えても明確な答えが見つかりません。教師になることを諦めたことを言えなかったからか。日々に追われ先延ばしにしてしまい、機を逃してしまったのか。いずれにせよ私は信頼してくれた生徒たちに応えることをしませんでした。若気の至りといえばそれまでですが、今でも度々思い出しては胸を締め付けます。人を傷つけることは自分を傷つけること。身をもって体感しました。彼女の作文にははたして何が書いてあるのか。どんなものにせよ”悔いのない行動をとる”勇気と励ましをあげられたらと思います。